雑学

心神喪失!無罪になるのは何故ですか?

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心神喪失!無罪になるのは何故ですか?

殺人事件を起こして無罪になるケース!
実際に存在しておりました。

2013年、知的障害のある長女を殺害したとして、その母親が逮捕されます。「どこの施設も娘を預かってくれないし、助けてもくれなかった。」 このように供述していたそうです。

母親は、介護による疲れと、悩みを抱え込んでしまった為に重度のうつ病を発症。その後、自宅の浴槽で長女を沈め、自らも池に飛び込みましたが、通行人に発見され逮捕されるのです。



裁判では、心神喪失を理由に無罪判決!大阪地検は控訴を断念した事から無罪が確定いたしました。

ここで今日のクエッション!
心神喪失者が無罪になるのは何故ですか?

~~ 雑学発表 ~~

心神喪失というのは、善悪の区別がつかない状態をいいます。善悪を区別する能力がない人が対象となり、一般的に、「精神障がい者」・「知的障がい者」・「酩酊状態の人」が該当しています。

ちなみに、酩酊(めいてい)とは、アルコールやその他の薬物を摂取したことによって生じる状態です。

一方、刑罰の目的は、
「再び悪いことを行っちゃだめですよ!」
「再び悪いことを行わないために、教育を施しますよ」

このような目的で刑を科します。
つまり、心神喪失者は物事の善悪がわかっていないので・・・

「再び悪いことを行っちゃ駄目ですよ!」と制裁を科しても、本人からしてみれば、”悪い事をした” という認識が存在せず、「僕はどうして刑務所にいるの?」という事になってしまいます。

刑罰は、報復のために科されるものではなく、

@犯罪の防止
◎犯罪者の社会復帰  を目的に行われます。

悪いことだと知りつつ、犯罪行為をした人に対しては、懲役を科すことにより社会復帰を目指せますが、心神喪失者に対しては、このような目的が果たせません。

心神喪失者が無罪になる理由はここにあったのですね。

一方、刑法で犯罪を成立させるためには責任能力が必要です。
刑法による責任能力とは、「事物の是非であったり、善悪を理解し、それに従って行動する能力」をいいます。

刑法では、「心神喪失者は責任能力が劣っている」と定義付けられておりますので、刑事罰に問えないのが実情です。

刑法第39条
1、心神喪失者の行為は、罰しない。
2、心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

心神喪失とは、善悪の区別が全くできない状態。
心神耗弱(こうじゃく)とは、善悪の区別が著しくつきにくい状態です。

ちなみ①
損害が発生した時の賠償請求です。
心神耗弱者に対しては請求する事が可能です。しかし、心神喪失者に対しては、民法第713条の規定により、本人に対して請求する事が不可能となります。

ちなみに②
例えば、お酒を飲み酩酊状態に陥ったとします。この状態で殺人事件を起こしてしまった場合・・・ 刑法第39条1の心神喪失に該当するのではないか?という疑問です。

昭和26年の判例によると、
高裁では酩酊状態を認め無罪を言い渡しました。

しかし、最高裁では、「他人に害悪を及ぼす危険ある素質を有する者は、飲酒を抑止する等、危険の発生を未然に防止する義務がある。己の素質を自覚していたものであり、事前の飲酒につき注意義務を怠ったがためであるとするならば、被告人は過失致死の罪責を免れ得ない」 として、過失致死罪を言い渡しました。

お酒を飲むと危険な行為をする!そんな素質を知りながら、自らがお酒を飲み、殺人事件を起こしたのだから、罪は免れませんよ。という判決です。

2015年2月に起きた川崎市で男子中1生殺害事件。容疑者とされている18歳の少年は、アルコールが入っていた状態で、カッターで首を切りつけていたようです。

裁判では、刑法第39条の心神喪失状態(酩酊状態)を訴え、無罪を主張するかもしれません。

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しかし、この少年の素質は
◎お酒で酔うと暴れ出し、誰もとめる事が出来なかった。
◎泥酔状態の時、被害少年を座らせ30分以上殴る蹴るの暴行を行っていた。

このような証言が出ています。

この18歳の少年も、お酒を飲むと狂暴になる事を自覚していたと思いますので、この判例を照らしあわせれば、酩酊状態にあたらないのではないか?とも考えられます。

役立つ雑学☆

著者 出川 雄一(ツイッター)   障がい者の工賃を高める仕組み(福祉資本主義)を考え、実践しております。主に点字名刺・点字印刷・ハンドメイドなど。障がい者ブランド(ココリティ)の活動も行っています。(雑学研究家 安田泰淳)

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